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私の曲の書き方


「最近の音楽はつまらない」

ぼくが音楽と付き合いだしてからというものこのセリフを雑誌で
目にしない日はないし、酒の席での音楽談議で耳にしない日はない。
これはどういう事なのかといえば、音楽を聞いているリスナーの怠慢であって、
広く深く熱意を持って探せば面白い音楽はそれこそ無限にあるのに違いない。
このセリフは一般の音楽ファンならともかく、少なくとも音楽にたずさわる仕事を
している人間の発するセリフではないと思う。
ただしぼくは、この件に関してだけは「最近の音楽はつまらない」と
豪語する耳の肥えた音楽関係者の弁護側にもまわりたい気がする。
まず上のキーワードを連呼する人種の年齢層は高い。
" 最近の音楽 " に感動がないのは、彼等が年を食っているせいなのかもしれない。
何十年も音楽を聞いていれば、10代の人より感動が薄くなるのは当然のような気がする。
しかし、それだけではないような気がする。
まず第一に、それは今の音楽のせいではなくて、自分の記憶のマジックのせいにある。
「昔はよかった、、、彼等のファーストはよかった、、、etc」
というのはこれは記憶のトリックである。
昔だってくだらない曲は吐いて捨てる程あった。
その中でもいいもの、いい時だけを憶えている。そうして時間のふるいに
かけられて生き残った「懐メロ」なり「スタンダート」なりに「いま」の音楽界から
任意に選んだ10曲とを比較するのでは勝負にならない。
これは映画にも絵画にも本にもプロレスにも芝居にもコントにもetc、、、同じ事がいえる。
昔、デトロイトのギタリスト、ジョージ・サラグットが
「名曲なんてものはもうすべて、チャック・ベリーが書き尽くしてしまったぜ」
と発言したが結局そういうことなのだ。

ぼくは10代の半ばの頃、たくさんの「名盤」に出会って、それらは今でもぼくの中で
「不動のトップテン」でいつづけている。
しかしある時を境にぷっつりと世の中の音楽が「つまらなく」なった。
世の中の音楽がぼくにはつまらないものなので、腹が立って自分で
自分だけのための娯楽を作ることにした。ロックが大好きなのに、
自分で買いたいレコードがまるでないので自分で作ることにしたのだ。
自給自足というやつである。

ぼくは初手から「上手い曲」を書くということを諦めている。
よくミュージシャンの中には自分の博覧強記を見せつけようと文学的な要素や
数学的な要素を盛り込んだものを造り出す人がいるがぼくはまったく逆の手法をとっている。

ぼくはライブで気持ちよく演奏出来る事に眼目をおいて曲を作っているので、
その「面白さ」がライブでわかりやすく、よく届く曲を書きたいとおもっている。
その手法というのは、意外にもビジネスの報告書を書くセオリーに似ている。
まず、一番最初に結果を書く。
これはロックにあてはめると「リフ」にあたる。
次にどうしてそう言う事になったのか、これはAメロなりBメロにあたる。
最後にこれに対する自分の意見なり、今後の対処の仕方なりについて書く。
これは大サビであったりぼくらの場合であればギターソロ及びギターのインプロ大会である。
これが一番伝わりやすい方法だろう。
ただしぼく自身、プロの音楽家としてレコードの場合レコード代、
ライブの場合ドアチャージをもらう以上、それらは 広い意味での
エンターテイメントでないといけない。少なくともぼくは
そういうプロ意識を持たないと、きまりが悪くて人様に見せられない。
だから一曲の中に極力2つ、面白いフックを用意しておく。
まず頭に一つ、ロックバンドの命「リフ」である。
これは漫才でいう「つかみ」にあたる。この作業には本当に時間をかける。
どういった作業かといえば、納得がいったものが産まれる瞬間をただ「待つ」のである。
これは経験からいっていくら机に向き合って音符と音符の
組み合わせを考えても良いものは出来ない事を知っているので、
うかぶまでただひたすら 「待つ」しかないのだが、これが辛い。
そしてふたつめを終わり近くに出してこれは落語でいう所の「さげ」にあてる。
以上がぼくの曲を作るやりかたである。

しかし当り前だが、なかなか思うように書ける事はない。
勝ったり負けたりである。
落ち込んだりもするが、まあそれでも今までなんとかやってこれている。
その際、何に救われているかといえば音楽が「好き」という事だけである。

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